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SONY α7IIIの問題とα7S IIIへの期待

最初に断っておくが、A7IIIはとてもよいカメラである。画素数も現時点で4200万画素が必要なければあえてA7R IIIを選ぶ必要はなく、2400万画素で満足できるはずだ。

必要ないというのは、4200万画素のための対価が高すぎると感じるならばそこまで必要ないという意味で、やがて4200万画素が当たり前になる時代がくるだろう。そのときは現在のA7IIIの値段で4200万画素が手に入るようになる。

 

よく高画素無用論を唱えるひとがいるが、私は画素数はあればあるだけいいと思う。画素数が上がるたびに持ち上がるノイズ増加論も、テクノロジーの進歩で改善されてきた。

大は小を兼ねるのだ。画素もたくさんあるに越したことはない。

 

もし私がフルサイズミラーレスのお勧めを聞かれたら、間違いなくA7IIIを押す。ニコンやキヤノンは一眼「レフ」の世界では最強だが、ことミラーレスでは新参者でありシステム拡張性の低さは否定できない。ソニーは当初こそレンズラインナップの弱さが指摘されてきたが、サードパーティを含め、よほど特殊な用途でないかぎり満足できるレベルにまで成長したと思う。

 

そんなIVが出るまで最強なA7IIIであるが、致命的な欠点がひとつある。

熱に弱い。

動画の連続撮影時間は30分であるが、それはよほど冷え切った室内か、真冬の屋外でしか通用しない。それ以外は10分から15分程度で警告が出て、ほぼ5分以内に停止する。

一度高温になってしまうと、再撮影開始まで5分〜10分空けなくてはならない上、次の撮影は10分もてばいいほうだ。ちなみに撮影モードは4K24p 100Mbpsである。

 

動画撮影では、非常に高温になるセンサーの熱をどう逃がすかが問題になる。いわく背面液晶を開けて排熱スペースを作れだの扇げだの言われるが、試した限り何をしてもダメなものはダメだった。

 

この熱停止問題以外はA7IIIには大変満足している。しかし、映像制作上、熱で止まってしまうのは死ぬほど困る問題で、今の所私の知る限り解決策はない。あったら教えてください。

 

そこでそんな映像制作者の期待を集めているのが、秋に登場するかもしれないA7S IIIである。A7S III発表の噂は延期に延期を重ね、流れに流れている。その理由は想像に難くない。

 

初めてA7Sが登場した2014年、そしてA7S IIが発売された2015年ごろはまだ低画素イコール高ダイナミックレンジという図式が成立していた。それに4Kが始まるかどうかといった頃だったし、8Kなんて夢のまた夢だった。

 

しかしソニー自身が高画素でも高ダイナミックレンジという図式を確立すると、別にSじゃなくてもRで構わないと考えるユーザーが増加した。みんな一台で済ませるなら済ませたいと考えるのは同じだ。そして、写真用途としてはA7Sの1200万画素というのは現代の視点では全く足りないのである。

 

そこに第3世代のA7が登場して、それが決定打になった。2400万画素あれば写真に困らない上、動画性能も旧世代のSシリーズよりも画素数が多いにも関わらず上だったからである。

しかしA7IIIには致命的な問題を抱えていた。上記の熱停止問題である。そこで、ユーザーは再び第3世代のA7Sに興味を持つようになったのである。

 

動画機を謳うSシリーズなら当然熱で停止するなんてないはずである。はっきり言ってグローバルシャッターが乗るかどうかよりも熱で止まらない設計を持っていることのほうが何倍も重要だ。それには画期的な放熱アイデアがあるか、筐体のデザインを多少変更しないといけないだろう。

 

ユーザーとしては形が変わることなどどうでもよいが、同じ筐体を使い回すことで、製造コストを抑えたいメーカーとしては悩ましいのかもしれない。

 

でも満を持して登場したA7S IIIが熱で止まって使い物になりませんじゃ、笑い話にもなりませんよ。というわけで、秋に登場あるいは発表されるであろうA7S IIIには期待と不安でいっぱいなのであった。