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色打掛

結婚式の主役と言えば当然花嫁である。花婿は添え物である。それは自分でもそう思ったし、たぶん男ならみんなそう思っていると思う。別に添え物であっても何の問題もないのだ。もし花嫁をそっちのけにして花婿ばかり写真を撮っていたらブーイングの嵐にあうが、その逆であればまったく穏やかなものである。それに普段とは違うきらびやかな衣装をまとった方を撮影したほうが楽しいのも言うまでもない。

 

まるで冬物の厚手の掛け布団みたいな打掛を羽織る。この年代物の打掛には見事な刺繍がほどこしてある。今こんな手の混んだものは作れるひとも少ないし一体いくらかかるかわからないという。繊細な刺繍のニュアンスを出すように気を使った。白く塗った手の陰影も意識した。部屋に差し込む曇り空のさほど明るくない自然光だけが頼りだった。

 

これは着替えの最中の一コマで、スタイリストさんやヘアメイクさんがせわしなく作業している中での撮影である。時間がないから私がでしゃばることもできず、すきを突いてシャッターを切った。

 

たまには顔の写っていない写真も撮りたいのである。