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くたばれバリアングルモニター!

期待していたソニーのα7IVがバリアングルモニターを採用したことで、少々がっかりしている。ほぼA7SIIIのボディまんまということでバリアングルモニターもそのまま引き継いだとも言えるが、多くの要望があっての採用なのであろう。

 

 

 

ソニーの場合、バリアングルモニター自体の問題に加えて、バリアングルモニターにしたことで生じる構造的な問題があるためバリアングルにしていいことなんにもないのであるが、世間の声、とくに海外からの声が大きすぎてバリアングル化は避けられないことだったのかもしれない。

 

 

 

ところで、バリアングルという言い方はわりと日本的で、海外の英語サイトではあまり見かけない(ゼロではない)。それよりもArticulating screenとかFlip out Screenなどと呼ばれていることの方が多い。フルフレームのことをフルサイズと呼んでいることに比べれば間違っているわけではないのでマシであるが、ティルトスクリーンだって可変式という意味ではバリアングルではある。

 

 

 

現行のバリアングルモニターの問題点は二つある。

 

ひとつはモニターを開くのに2ステップ必要であること。ティルトタイプであれば手前に引き出すワンアクションで済むところが、バリアングルではまず横に開いてそれから回転させるという二手間が非常に煩わしい。忙しいときなどなおさらで、発狂レベルで頭にくる構造である。

 

 

 

もう一つの問題点は、カメラに対して顔を横に向けないと撮影できないこと。モニターが横に張り出すため、体から首をよじってモニターを覗く格好になる。これが非常に違和感があるし、未だに全然慣れない。

 

 

 

昔からあるビデオカメラはもれなくバリアングルモニターであるが、こうした違和感は存在しない。それは、最初からそうデザインされているからである。モニターを開いたときに顔が正面を向くように設計してあるからである。翻って、一眼レフ時代から形状を引き継いできた現代のミラーレスは、右手でグリップを握って、左手をレンズに添えて、真正面に構えることを前提としている。カメラよりも横に飛び出したモニターを見ながら撮影すること全く想定していないのである。

 

 

 

モニターの可動領域が広いバリアングルモニターが本当に良いものならば、今頃ティルトタイプなど絶滅しているはずである。が、そうなっていないのはカメラが何たるかをメーカーがわかっているからである。背面モニターのバリアングル化は、声の大きい消費者に迎合した結果であろう。ソニーはフラッグシップでカメラメーカーとしての矜持を見せたが、より多くのひとが手にすることになるA7IVではその意地を突き通すことはできなかった。

 

 

 

写真にしても動画にしても撮影するときは水平垂直を出すことが非常に重要であるが、横を向いて撮影をするバリアングルモニターでは困難である。やってみればわかるが、正面向いているのと、顔が横を向いているのでは水準器の合わせやすさが全然違う。それに、たとえ水準器が水平を示していても感覚的に画面が傾いて見えてしまうのがまた横を向いて撮影をするバリアングルモニターの欠点であると思う。機械の表示だけでなく、直感的にフレーミングしたい僕にとって誠にバリアングルモニターは使いづらい。

 

 

 

以上2点がバリアングルモニターの欠点であるが、ソニーの場合バリアングル化したことで生じる構造的な問題も見逃せない。

 

 

 

ソニーに限らず多くのメーカーのカメラが左側に端子類を装備しているが、ソニーがいけないのはその端子類の位置である。

 

 

 

例えばヘッドフォンジャックの位置が最悪である。プラグを挿すとモニターが干渉してそれ以上回らなくなるのだ。バリアングル意味ないじゃん。

 

 

 

HDMI端子の位置が最悪である。HDMIは非常に抜けやすいコネクタを持っているため、それを抜けないように保持するためのアダプタがカメラに付属している。が、そのアダプタをつけるとモニターが干渉してそれ以上回転しなくなる。バリアングル意味ないじゃん。

 

 

 

バカじゃないの?

 

 

 

これがティルトタイプなら、そもそもモニターがカメラの外に飛び出すことがないので決して起こり得ない問題である。設計した時点でそれらはすべて既出の問題点だったはずである。バリアングルをやめるか、端子類の位置を干渉しない場所に変えるかしかなかったはずであるが、なにも解決しないで商品化したソニーの罪は深い。

 

 

 

さらに罪深いのは、A7SIIIのときにやってしまったことを、後続のA7IVでひとつも解決しないまま、また商品化したことである。業界最大手の傲慢。最近ニコンがZ9を発表してニコンユーザー以外からも拍手喝采を浴びているが、もしニコンが業界首位を走っていたらこんなカメラはおそらく生まれてこなかっただろうと思う。

 

 

 

ぼくはツァイス信者なのでソニーから乗り換えることはしないが、ソニーはもう少しZ9が誕生した理由を考えてもいいんじゃないかと思うよ。

 

 

 

世の中あまりにもバリアングル礼賛の声が大きい。英語圏のYoutubeなんか見ていると、バリアングルじゃないというだけで旧世代な扱いである。そういうYoutuberの声のせいでバリアングル化が推し進められているのではないかと錯覚するほどである。ぼくも横に張り出さないバリアングルモニターができたら称賛したいと思うが、現状タイプはただただ使いにくいの一点である。あんまりバリアングルに文句をいうひとを見ないのでここに書いておく。