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化学変化

ダークパープルという名前の人参がある。完一さんが作っている野菜のひとつで、巷では珍しい種類かもしれないが

我が家的には日常である。この人参、普通の人参と違ってすこし芋っぽいというか独特の癖がある。だから

料理の材料にするのが難しいのであるが、ぬか漬けにすると非常に美味しいということを発見した。

 

このダークパープルは内包している色素の量が他の紫系の野菜に比べて段違いに多いのか、これを入れると料理が

真っ黒になってしまう。だからぬか漬けにしたらどうなるか興味しんしんであったが、なんと糠が赤紫色に染まった。

さらに、もともとはブルー系の紫だったものが、レッド系の紫に色が変化しているではないか。

 

こころなしか透明感まで生まれている。色鮮やかでとても美しい。青から赤へ色が変化したのは、ぬか床に生息している乳酸菌によって酸性になったせいでしょうか。ぬか漬けは酸味がある漬け物だから酸性になったという考え方は賛成である。(こういうのいちいち言わずにはいられない性格なんです僕)

 

ところで、ぬか漬けにおける糠の役割りって一体なんだろうか。漬け物に必要なのは乳酸菌と塩分であろう。

だとすると糠ではなく土でもいいのかもしれない。しかし土だと乳酸菌以外の菌類がたくさん発生してしまう

だろうから、できるだけ純粋培養的に乳酸菌だけを増やすための土壌としてたまたまそこにたくさんあった糠を

利用したのが始まりではないかと想像する。

 

糠は乳酸菌がぬくぬくと過ごすための快適な家屋であり、そこへ投入される野菜は乳酸菌の餌である。

ぼくらはそのおこぼれを漬け物としてありがたがっているに過ぎない。乳酸菌の食べ残しを

頂いているに過ぎないのだ。