ぼくが独立して一番やりたかった映像プロジェクト、GRIT JAPAN:やり抜く人々の第一弾が完成しました。そこでは日本酒 菊姫のことが取り上げられています。ここではGRIT JAPANには書ききれなかった(或いはそぐわない)はみ出し話を記しておきたいと思います。
石川県鶴来にある菊姫を萬屋の由起子さんに連れられて訪れたのは2011年2月のことでした。冬の一番寒い時期に行ったのです。冬の日本海側というのは毎日どんより曇っていて雨か雪ばかり降っているイメージで実際そのとおりらしいのですが、ぼくが行ったときは澄み切った青空に薄雲がたなびいていました。空気こそ凛と引き締まっていて冷たかったですが、耐えられないというほどではありません。ボストンの常時マイナス7,8度という痛い冬を経験しているせいか、痛くない寒さは大丈夫です。もちろん一泊二日という条件がつきますが(弱)。
菊姫に対する思い入れというのはぼくよりも妻のほうがずっと強いです。学生時代に菊姫を知り、その美味さに虜になるも高価な酒でそういつも飲めるものではなかったそうです。だから萬屋で売られている値段を見て驚いていました。こんなに安いのか!と。もちろん菊姫にも普通酒から純米酒、吟醸酒、大吟醸酒と様々なバリエーションがあって値段も800円から5万円までと幅広いです。
でもボトルで売られるその価格は今まで料理屋でみてきた値段に比べれば遥かに安く見えたのだと思います。ぼくは萬屋と出会うまで妻がそれほど菊姫に入れあげていたとはまったく知りませんでした。由起子さんとの出会いは妻の知られざる一面をも発見させてくれたのです。
菊姫で働くひとたちはみな、由起子さんが映像でも言っているとおり個性的ですてきなひとたちばかりでした。夜の宴会(これが接待形式で、ただの一般客であるぼくらは恐縮しっぱなしでした)でお話させていただいた方々のことは今でも酒の肴として蘇ることがあります。あの頃新人だったあの女の子も今では立派なマイスターになっていることでしょう。
そうしてひとを知り、蔵を知れば菊姫が増々美味しくなっていくのです。
菊姫はほんとうに素晴らしい日本酒です。でもそれと同時にこんな疑問が浮かびました。
菊姫のように真摯な酒造りをしていて、且つ美味い酒をだす蔵はほかにないのかということです。いくつか情熱を感じる酒蔵の酒を飲んでみたりしましたが味わいのほうがその思いに追いついていませんでした。もちろんぼくらの探せる範囲など全国の酒蔵の数にしたらたいしたことがありません。
もしうちは造りもいいし味も美味いという蔵がありましたら、ぜひお声がけください。その個性を感じてみたいのです。