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レベル こぼれ話

まだ映像をご覧になっていない方はこちらから。

 

レベルの松田さんと最初にお会いしたのは3,4年前のことです。シクロクロスというオフロードを走る競技用の自転車をオーダーメイドで作りたいと思っていたときに、懇意にしている自転車屋さんが勧めてくれたのがレベルでした。

 

懇意にしている自転車屋さんって何のこと?と思われる方のために説明しますと、ロードレーサーなどのスポーツ用自転車は定期的にメンテナンスが必要なため、大抵は自分が気に入った、波長のあう自転車屋さんと付き合うことになります。メンテナンスのみならず、買い物もその店でしますから必然的にお店に出入りする機会が増えて顔見知りになりやがて常連になります。

 

ぼくの場合、自転車屋さん選びの基準は用もないのに訪ねていってくっちゃべって来れる店です。買い物もしないで話しに行くだけのことのほうが多いです。なんだそりゃ、と思われても不思議ではありませんが、自転車屋さんとはそういうところという刷り込みが以前通っていた店(残念ながら閉店)でされてしまったものですから仕方がないのです。

 

ちなみに買い物をしない常連のせいでそのお店が閉店になったのではありません。むしろ逆で一番買い物をするのは常連なのです(のはずです)。海外通販が一般的になって、内外価格差の大きさ(ものによっては倍違う)は中々に無視できないものがあります。しかし頑なに懇意にしている店で買い続けるぼくはオールドスクールなのだな、と自分でも思いますがそれでいいと思っています。

閑話休題。

オーダーメイドと言えば、自分の思ったとおりに作ってもらえると思うかもしれませんが、こと自転車に限って言えば、残された自由はカラーリングのみと言えます。

設計その他については素人があれこれ口出しするよりも、松田さんの考える最高の一台を作って下さいと言えば事足ります。昨今はインターネットのせいで耳年増になっているひともかなり多いかと思いますが、経験に裏打ちされたプロの見識に口出しするのは粋とは言えないと少なくともぼくはそう思います。

 

だから、ぼくのしたことと言えば、デザイン画を作ったことと、色見本から色を選んだことだけでした。これがその時ぼくが作って持っていったデザインイメージです。

ちなみに塗装は塗装屋さんが行うものです。レベル(に限らずどこの工房でも)でフレームが出来上がったら塗装屋さんに送られて塗装され完成となるのです。デザインは走行性能とは無関係ですので松田さんも好きにすればいいと言って口出しすることはありません。

 

そんなふうにして、4ヶ月ほど経ってフレームが完成しました。オーダーメイドにかかる時間としては、早くもないけど遅くもないといったところでしょうか。

自転車は完成したら終わりではありません。むしろそこが始まりです。この自転車に乗って色々なところを走りました。

精度出しの風景を撮影させてもらうというのは実は大変なお願いだったと撮影しながら思いました。0.1ミリの誤差を追い込んでいくには相当な集中力が必要です。それを外野(ぼくのこと)がいる状況で行わなければいけないのです。メディアへの露出が多く、撮影に慣れている松田さんと言えど気が散らないわけがありません。ああ大変なことお願いしちゃったなと思いながらもできるだけ忍者のごとく気配を消して撮影に集中しました。快く撮影を受けてくださった松田さんには感謝しかありません。

 

松田さんは仕事のときこそ凄まじい集中力をみせますが、普段はとても温和でおしゃべり好きな方です。一緒にお茶をしているときやランチに行ったとき松田さんはよもやま話をたくさんしてくださいました。あ、それあとで撮らせてくださいとお願いしたことは一度や二度ではないくらい興味深いお話を伺えました。そうした話題を撮影中に引き出せるようにならないといけません。ぼくもまだまだ修行が必要です。

C-1について触れたいと思います。

自転車の世界では、ペダルを踏んだ力以上に自転車が進んだ感覚があると、その自転車はよく走ると表現します。松田さんもC-1はよく走るとことあるごとに言っていました。それを聞きながらぼくはほんまかいなと思っていました。そして実際に乗ってみると、それは本当でした。

 

見た目で言えば似たような自転車はたくさんあります。自転車に興味のないひとからしたら、無印良品の自転車となにが違うんだと思うかもしれません。それが12万円だって!?と驚くのも無理のない話です。答えは乗ってみればわかります。この違いは自転車好きではないひとでもはっきりとわかるでしょう。そしてこの世には乗って楽しい自転車があるんだ、と驚くと思います。

 

カゴがないと日常使いには不便という方はカゴをつけましょう。写真にはついていませんが、C-1はイージーオーダーですのでカゴももちろん取り付けられます。

もしあなたがひとつのものを大事に長く使いたいという志向の持ち主でしたら自転車もその中に加えてほしいと思います。

通勤、或いは通学用に。そしてそのまま一生乗り続けたら、とてもすてきなことだと思いませんか?