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夏模様

先日用事があって門前仲町の富岡八幡宮へ出かけた。以前内輪もめの恥ずかしい事件があって全国的に有名になってしまった神社であるが、もとよりこの地に根付く歴史ある神社だけにその賑わいはまったく衰えていない。私も十年前結婚式の式場候補として妻と見学に来たことがあるが、周囲の雰囲気が好みでなかったため早々に候補外としたのは正解だったとあの事件後に妻とよく話したものである。

 

お盆休みで都内は明らかに人が少ないと感じるが、門前仲町はむしろ人が集まってきており、神社の境内に入ればより一層の賑わいを感じた。浴衣姿の女性を多く見かけたが、そのほとんどがサンダル履きで、草履を履いている女性は驚くほど少ない。画竜点睛を欠くと思うのは私だけだろうか。数こそ少ないが浴衣を着た男性は見かけた限り100%下駄なり草履を履いていた。サンダルの方が歩きやすいのはわかるが、ファッションは我慢であると藤原紀香も言っていたではないか。

 

見上げれば空はまだ青さを残していたが、ビルによって太陽を遮られた境内は早くも灯籠の明かりを際立たせていた。カメラを首から下げていたせいか、観光客に写真を撮ってと頼まれてiPhoneを手渡される。何を背景に撮りたいのかと聞けば本殿だという。すでに近づきすぎた本殿が背景に入り切ることはなく、仕方なく適当なアングルに切って縦横両方撮って返した。

 

用事が済んだので屋台が立ち並ぶ境内を足早に歩く。子供の頃あれほど心をときめかせた祭りの屋台に今は何の感慨も湧かない自分を見つけてふうんと思う。鳥居の近くまできてそう言えば本殿はどんな顔をしていたんだっけと振り返って写真を撮った。本殿は近代的なビルに囲まれてより一層その風格を増していた。