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家族の肖像

家族写真はおひとりさまポートレイトよりも難しい。

技術的な問題で言えば絞れないので雰囲気づくりに制約が生まれるし、アラも隠せなくなる。ライティングが1灯なので角度にも制限がでる。ひとりならもっと横から当てるが、3人だとだいぶ正面に持ってくることになる。でも陰影はつけたいのでそのギリギリのところを狙っている。

 

写りで言えば、三人が一番良い表情をしていることがベストであるのは言うまでもないが、実際そんなことは稀である。小さなお子さんの場合、個人的にはべつにカメラ目線である必要はないと思っていて、それよりも重要なのは表情と角度である。このご家族のお子さんはちょうどカメラを向いてくれたが、横を向く場合はストロボ側に顔を向けていてくれないと困る。反対だと顔が影になってしまうためだ。

 

ご家族のショットで、全員がベストにならない場合、子どもをとるか、奥様をとるかという極めて難しい選択を迫られる。この日のために入念にメイクをしてきた奥様である。プロなんだから120%の顔で映っていて当然と思っていらっしゃるに違いない。もちろん子どもが可愛く撮れていることは重要だが、同時に自分も美しく撮れていなければいけない。

 

ここでぼくはコンタクトシートを眺めながら苦渋の選択を強いられることになる。幸いお子さんが男の子で真顔でも凛々しさが立っていたから奥様優先の選択とさせて頂いた。

 

撮影してからこんなに天井が高いのだから立って撮ればよかったなとあとから思った。(ウソです)