子どもの頃から昆虫が大好きであるが、大人になってからは虫を捕るよりも撮るほうが好きになった。
少年だった頃はとにかく昆虫を捕獲して所有することに大変な満足感を覚えていたが、年齢を重ねるとともに
そうした欲求は衰えていった。たぶんだんだん虫が可哀想と感じるようになってきたのだと思う。
やがて写真に凝りだすと、今度はカメラを昆虫に向けるようになった。昆虫撮影はいい。どちらにとっても無害であるし、
その上遠慮なくカメラを向けても虫は文句を言わないからだ。
ぼくがなにかと昆虫採集に息子を連れて行く影響もあって息子は昆虫が大好きである。
そしてもちろん目的は捕獲にある。少年はそれでよいのだ。自力で昆虫を捕まえるのは技術や知識が必要である。
そしてその方法は教えられても実際に自分の体を動かしてみないとわからない。最初はてんで話にならなかったが、
次第にコツを掴んで自分で虫を捕まえるようになってきた。
夏がやってくると昆虫のシーズンである。息子は河川敷の原っぱでバッタ捕りに夢中になっている。まだ初夏だから
バッタも子どもで小さくてその分捕まえやすい。ぼくはその傍らでシロツメグサやアザミや名の知らぬ花に集まる蜜蜂を
カメラで追いかけた。蜜蜂という昆虫は実に可愛らしい。金色の柔らかそうな産毛をまとってせっせと花の蜜だの花粉だのを
集めている。こちらがカメラを向けても一向お構いなしだ。
ぼくはリコーのGR3を蜜蜂に向ける。このカメラは被写体をトラッキングする機能があるからうまく蜜蜂にロックしてピントを
合わせる。これが結構うまくいく。GR3はAPS-Cだが意外に寄れるので画面いっぱいに撮ろうと思わなければ撮れるのだ。
ぼくは空を背景に入れたくてしゃがんでカメラを少しあおった。奥に息子がバッタ捕りにせいをだしていたからそれも背景
にいれたろうと思っていたが、絞り開放F2.8だったため、だれだかわからないどころか、人がいるのかさえわからなくなって
しまった。
かといって絞れば原っぱがうるさくなってしまうから悩ましいところである。今回は蜜蜂優先だったので僕的には開放で正解
なのであるが。昼過ぎの太陽が鮮烈に花の紫を引き立てた。レンズのシャープさも申し分がない。忙しげに飛び回る蜜蜂を
うまく切り取ることができた。結構満足。