ワカケホンセイインコがやってきて、桜の花を食いちぎっている。乱暴に茎から噛み切って蜜を舐めている。だからまだ花のままぼとりぼとりと地面に桜が落ちていく。息子が窓辺にたってその様子を眺めている。
「おい、こっちへ来い!」と言って、
「言葉覚えてくれなーい」とぼくに言った。
たった一度言って覚えたらたいしたもんだ。なんて純真なんだろうキミってやつは。
まったく子どもの不思議は大人の理解するところを超えているなあ。心が洗われるようだよ。
キミたちはすぐ喧嘩をするから二人一緒に森へは連れて行かないよ。とぼくが言ったら二人して懇願して、お願いします絶対喧嘩しないから一緒に森に連れて行ってくださいだって。でもね。案の定オダギリジョー。やっぱり寄ると触ると喧嘩が勃発するんだ。だって妹が、だってお兄ちゃんが。はいはい。でも結局キミらは仲良しなんだから。離れろったって、離れることなんてできないんだね。
大きなヘビが横切ったね。アオダイショウっていうんだ。怖くなんかないさ。大丈夫行っちゃったよ。初めてトカゲを見たね。キミたちは見飽きるということをまるで知らないね。いつまでもいつまでも美しい青い尾を持つそいつを眺めていたね。生まれて初めて見たんだもの、目が離せないね。とくに宝石好きの娘はすっかりトカゲに魅了されてしまったね。木登りが得意じゃないトカゲくんもキミから逃げるために必死になって登っていたよ。
風が吹き抜けるとさーっと桜の花びらが散るんだ。こんな日は一年にいくんちもないんだよ。その瞬間をこうしてキミたちと過ごせてぼくは幸せだなあ。